50MHz Transciever Mk-94 製作記
Mk-94製作コンセプト

前プロジェクトである50MHzAMトランシーバー「MK-92」では、単に自作品ができてそれを使ってQSOができたという喜び以上に、その製作の過程で、多くのことを学びました。それは、PLL制御やそれをマイコンで制御する技術、各ステージ高周波回路の特性はもちろんですが、それ以上にセットとしてバランスよく「全体をまとめる、作り上げる」ことが、何よりも難しいこと。入手できる部品、ユーザビリティ、利得の配分やスプリアスコントロール、物理的寸法の制約、果ては製作期間(1つのステージを1年もかけていたら、いつセットができるの?)時にはこだわって、時には特性に妥協したり、失敗を認めて、別の道に移行する勇気や判断力、これらがないと最終的に完成はしないのだと・・

そんな中で、Mk-92での大きな反省は「セットとしての精度」が伴っていないこと。たしかに、メインの周波数域でQSOするだけなら、MK-92で何も問題ありません。しかし、ちょっと周波数が表示とずれていたり、日によってバンドの端で送信波が出なかったり、受信できる範囲で、内部スプリアスをかなり受信していたり・・更には、夏の熱い日には30分くらいで内部の温度が上がり使用不能になったり。

メーカー製リグのすごいところは、こうした「信頼性」「忠実性」にかかわる問題がほぼ皆無な点です。

今回、ステップアップしてAMに加えて、SSBCWを扱いますが、単に「AM機が出来たから、今度はオールモード」という発想ではなく、この「セットとしての信頼性/忠実性」をどう向上していくかが、このプロジェクトの大きなテーマです



一言で、Mk-94の製作ポリシーを表現するなら、この言葉につきます。ただ、今時「普段のQSOに使えるような=>例え、それが6mだけでもメーカー製リグにとって代わる」リグを作るのは大変です。複雑すぎるからです。残念ながら、自作記事によくある、ある2石や3石の回路で、その代わりをすることはできません。メーカー製リグの回路図を見るといつも思いますが、「どうしてこんなにトランジスタやICを使わないといけないのか?」こう思ったのは、当局だけではないと思います。

たしかに、6mAMについては、MK-92QRVするようになりました。しかし、各局ご存知のように、6mAMだけでは「6mで普通に使う」ことはできません。残念ながら、「AM」というモードはあまりにマイナーで、ロールコールのような特別な状況を除けば、普段の週末は相手がいないからです。よって、SSBCWといったコモンになるモードにQRVできなくてはいけません。


もう一つのファクタはパワーです。QRPで運用することは、勿論すばらしいことです。もし、100mW200mWのリグが完成したら、まずは「QRP記載のアワード奪取やコンテストのQRP部門で出てみる」とは思うでしょう。しかし、DX局やCfmしていないJCC/JCGの局が出ている状況でも、そのQRPリグで出たくなるか?は疑問です。作ったリグを末永く使うために、当局は「自作機こそQROを」と思います。 そこで、少なくとも5-10W。できればそれ以上をめざすことにします。



メーカー製リグは、ハード的にもアマチュアが作るそれと比較して、すごいのですが、搭載しているCPU内のソフトウエア(ファームウエア)です。

もし、このプログラムの機能をロジックICで組んだら、とんでもない大きさになるでしょう。このCPUですが、一見やっていることは周波数の表示やキーボードのコマンド入力制御ぐらいと考えがちですが、実は重要な機能をソフトウエアが担っています。例えば、周波数の切り替え。ダイアルを回したときのエンコーダパルスを、PLLやDDSのICに送って、それを周波数に変えるようなことは、すべてCPU内のプログラムが行っています。この際、オフバンドしないようにしたり、切り替えステップの制御などを加味しなければなりません。実際、このセットでの開発期間の半分はファームウエアの開発に費やされました。


次にユーザビリティ。これも、Mk-92の時からのコンセプトですが、周波数表示やモードの切り替え、周波数の移動などがワンタッチでできなければ、作った本人でさえ「普通に使う」には役不足。これらが実現できなければ、やはり多分メーカー製のリグ使用に戻ってしまいます。
この他にも、そこそののデザイン性や、堅牢に作ることなど、課題は山積することになります。