6mAM機を製作するにあたり、次のような性能を実現することを目標としました
● 完全トランシーブ操作ができること
今時、大昔のAM機にあるように、送受信の周波数をキャリブレーションで合わせる必要があるのでは、それだけで使う気がうせてしまいます。トランシーブ操作は絶対条件です。
● AMモードで通常使う周波数を網羅すること
各エリアのAMロールコールで使っている周波数、及び通常のQSOで使われて周波数は、50.500から50.650MHzと思います。余裕をもって、50.400から50.800MHzとしました。
● 送信出力は、QRPであるものの実用的なレベルであること
「AMのQRP」というと、0.2〜0.3Wや中には10mWというQRPpの製作例が多いようです。たしかに、使用目的をしぼったり、運用のロケやQRVのタイミング(季節的な要素など)を考えれば、こうしたパワーでも十分実用になります。しかし、あえて1W以上のパワーを目指しました。最終的には既存の自作リニアと組み合わせて10W程度での運用することを考えています。
かわりに、内臓電池による運用及び内臓アンテナは考慮しないことにしました。運用スタイルとして、固定局か移動運用でも、発発や車装バッテリー+外部アンテナで使うことを前提とします。
● 受信部はメーカー製リグの感度に匹敵すること
中々定量的にメーカー製リグのAMモードにおける性能がわからなかったので、SGを使って、手持ちのRigで実際に測定してみました。
測定したのは、手持ちのおなじみのIC-706MK2とIC-729というアイコムの少し古いリグです。これを使い、Sメータの振れと信号強度の関係を50.600MHzにて確認しました。
信号強度 |
IC-729(PreampON) |
IC-706MK2 |
-70dBm |
9+25dB |
9+20dB |
-80dBm |
9+10dB |
9+5dB |
-90dBm |
9 |
8 |
-100dBm |
8 |
6 |
-110dBm |
5 |
4 |
-120dBm |
1 |
1 |
結果、IC-706MK2のような現行機種(?)も含め、-110dBm以下で信号が識別且つSメータが振れる感度があれば、 メーカ製に匹敵すると思われ、この値を目標にします。
● 周波数直読ができること
昔、BCLという趣味がはやったころ、ラジオに7セグLEDの周波数直読機能がついたものが発売され、当時中坊だった当局は衝撃を受けました。そのトラウマではないのでしょうが、どうも周波数が表示されることにこだわってしまいます。もちろん、メーカー製リグではあたりまえの機能なのですが、実現には、マイコンを搭載するかデジタルICを並べる必要があります。自作機、それもAM機でそれをやる必要があるか悩みました。
しかし、上記「AMモードで使う周波数の網羅」をVXOで実現する、それも安定して使えるようにするのは、かなりの技術が必要です。結局、PLLやDDSを積むしかないことを考えると、マイコンのソフトで、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)を実現するのが、ある意味一石二鳥で妥当という結論です。ここでは、今はやりのPICマイコンをコントローラとすることにしました。
● 再現性をどこまで考慮するか
これも悩みました。初めから「雑誌XXXに投稿する」「キットとして売り出す」などが前提としてあれば別ですが、入手が容易な部品だけを使用、且つ、「調整が容易」つまり、測定器類(SGやスペアナ)なしで上記を実現するのは、かなり困難です。
また、マイコンを使う以上、そのプログラムのライター、コンパイラなども必要です。実機だけでなく、こうした間接的に使用する機器への投資や知識も重要なファクタになります。
よって、「再現性は考慮せず。部品は手持ちのもの、又はその時入手できるものを使用。部品点数の増加はさけられない」というコンセプトにせざるを得ませんでした。
今回製作の回路図、マイコンのプログラムはすべて公開しますが、どうか、「全体を再現できるか?」という視点でお読みいただくのではなく「ポイント・ポイントで貴局の自作品の参考になる項目があるか?」という点で読んで頂けると幸いです。
● 本機の名称
本機の名前は「Mark-92」とします。面白くもなんともないのですが、単純に当局の自作品(小さい物を含めて)の連番です。米軍が使用する兵器の識別ナンバーを参考にしました。
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